■ 仔猫の観察日記−一日目後半− ■
如月某日―――夕方。
仔猫になった修兵を連れ帰ったオレは、ひとまず、居間のソファに腰を落ち着けた。
修兵が阿近の薬を飲んでから、正味30分くらい経っただろうか。
地獄蝶で九番隊内に仕事納めの伝令を発し、隊長執務室の窓から、全力の瞬歩で家まで―――誰かに見られた自覚はないが、すぐに話は広まるだろう。
そのルートも祖おそらく予想通り。
阿近からひよ里へ、ひよ里からリサ、ラブ、ローズ、鉢玄、白、真子の順番で、おそらく。となれば、真子からは吉良や浦原、京楽、浮竹、日番谷……と、もはや樹形図が描ける状況で情報は広まっていくはずだ。
となると、この静寂も、あと持って1時間か。
「さーて、そうすると、どうするかな……なぁ?」
「みゃー、ぁ?」
修兵は、オレの白羽織が相変わらず好きらしく、気持ち良さそうにじゃれついては鳴いている。
もちろん、膝の上から下りることはない。
時折見え隠れする可愛い尻に、改めて何か着せてやろうとも思うが、どの着物や服を着せたところで、黒い尻尾が邪魔をすることは間違いない。
それにおそらく、リサかローズあたりが、尻尾を通すための穴を開けた服を、今頃急ごしらえで発注していることだろう。
着替えは、それを待ってからでも遅くない。
「うーみゅ、うーみゅ」
「ん?……お、抱っこか?」
「むみゃーぁう」
「はは、甘えっ子め」
死覇装の中に潜り込もうとする身体を捕まえて、持ち上げる。向かい合わせになるように膝の上へ座らせてやると、目の前に見えていたオレの69へ、修兵は嬉しそうに手を伸ばした。
「みぁう、みぁう……みぁーぁ」
「……そうか。おまえもちゃんと解ってるのか」
「みゃぅ!」
「あぁ。嬉しいよ。おまえとオレにとってこの数字は、特別なものだからな」
「んーんー」
「んあ?くっすぐってぇな」
「ぅみー……」
柔らかい頬が、ふにふにと腹に押し当てられる。
胸部をくすぐる猫耳をぴんと指ではじいてやると、「みにゃぁん」とやや色っぽい鳴き声がして、仔猫がきゅぅと抱きついてきた。
「なぁんだよ、甘えっ子」
「みゅ?みぁーぅ!」
「はは。解った解った。ごめんな……修兵」
「みゃー……」
猫と言えど、ちゃんと自分の名前は解るし、オレにそう呼んでほしいということか。
ご機嫌斜めは一瞬で終わったらしく、くるん、と修兵が丸くなる。
こうしてみると、身体のサイズがよくわかる。子供であったときと、全然変わらないんだな。
他の誰でもなく、オレの胸の中にぴったりと収まるサイズは、幼い修兵ならではのものだ。
「みぁーん……」
「?……あぁ、何だ、眠たいのか」
通りで丸くなったと思った。
仔猫は巣ごもりをしたいらしく、オレの白羽織をわしゃわしゃとかき寄せると、オレの右腕を引っ張り込んだ。
どう考えても柔らかさは不合格だと思うのだが、修兵にとってオレの腕は抱き枕として最適のものらしい。
「なー……みゃぅ?」
「ん、構わねぇぜ。そうしていたいんなら、好きにしな」
「ぅみゃー……み、ゃぁん……」
「おう。少し眠れ、修兵」
「ふみゅ……」
小さな身体は、眠りに落ちるのも早い。
喉の奥で小さな鳴き声を上げた修兵を、二度三度と撫でてやると、右腕にかかる幸せな重みがずしりと増した。
余分な肉が付いていない筋肉だけの腕に、修兵の柔らかさは鮮明で気持ちがよい。
余っていた部分の白羽織を身体にかけてやると、幸せそうな顔で仔猫はふにゃ、と鳴いた。
声といい表情といい、攻撃力は甚大だ。
……どうしたもんか、この可愛さは。
オレにだけ見せてくれるのならいいが、おそらくそうはなるまい。
ふわふわと跳ねる猫っ毛を撫で混ぜ続け、しばらく思案に暮れる。
どのみち答えは「状況に応じた妥協」しかないのだろうと思いながら寝顔を眺めていると、早くもタイムリミットはやって来たらしい。
「……なんだ、もう1時間経ったのか」
見事に勢揃いを始めた霊圧が、徐々にこちらに近付いてくるのが解る。
やはり、第一陣は元仮面の軍勢組か。
どうせ無駄だからと施錠をしていなかった扉が開き、玄関がどやどやと騒がしくなる。
修兵も来客に気付いたらしい。今まで伏せられていた耳がぴこんと立ち上がり、じっとしていた身体がもぞもぞと動き始める。
「んなぁ……?」という鳴き声がして、大きな目が開けば覚醒完了。
オレの腹に抱き付かせるように体を起こしてやると、ジャストタイミングで真子達が部屋に入ってきた。
「よー、拳西!聞いたでぇ?修兵がまーた可愛らしくなったんやってな!」
「………まぁな」
どこまで正確に情報伝達が行われたのかは知らないが、可愛らしいというのは的を射てる。
手に手に大量の土産物を抱えた客達は、オレへの挨拶もそこそこに、早いところその可愛い修兵を見せろと言わんばかり、先を争うようにこちらへ近付いてきた。
だが、当の修兵は大量の来客に驚いてしまったらしく、大慌てでオレの死覇装の中に潜り込む。
しかしそれでも隠しきれない耳と尾が、ふるふると震えているのがヤツらから丸見え。
時折聞こえるか細い鳴き声もセットとなれば、まず真子の顔がへらりと笑み崩れ、次に白が歓声を上げ、間髪入れずにローズと鉢玄がそれぞれ「かわいいねぇ」「可愛いですねぇ」とユニゾン。
かと思えば、羅武とリサから「拳西、お前、顔ニヤケてんぞ」「………萌えってヤツやわ」と、どちらもあまり有り難くない台詞。極めつけはひよ里のからかい混じりの溜息と来た。
七者七様の反応に、思わず霊圧がイラっと揺れる。
そのせいだろう。修兵は真子達にますます警戒心を抱いてしまったらしく、なおもオレの懐深く潜り込もうと必死で身体をばたつかせ始めた。
「んゃぁ!みゃぁ……!」
「あらら?もー、しゃぁないなぁ。修兵んこと怖がらせんなや、拳西」
「そーだよ!莫迦拳西がイライラするから、修ちゃんもびくってなるんじゃーん!!」
「………ちっ」
言いたい苦情―――イライラの原因はオマエらだろうが―――は山ほどあったが、さりとて、修兵を怯えさせたままというのも気に入らない。
それに、善意に解釈すれば、真子達も修兵のことが可愛くて仕方がないだけなのだ。
ただそれが、時々オレへの揶揄に繋がると言うだけで。
仕方なく、霊圧の揺れを元に戻すと、やっと修兵が顔を上げる。
それでもまだ不安げに揺れていた瞳に「大丈夫だからな」と声を掛けると「みゃ、ぅ」と鳴いた仔猫は、くるりと真子達の方へ顔を向けた。
もしかしたら真子達を覚えているかと思ったが、残念ながらそうではないようだ。
「この人達だぁれ?」と訴えるような眼差しでオレを見つめた修兵は、もう一度真子達の方を向いて、きょとん首を傾げた。
その仕草に、いち早く反応したのは白と鉢玄だ。
「あっ!修ちゃんこっち向いたよ、ハッちん!!」
「本当だ。いやぁ、可愛いデスネー、白サン」
この2人、修兵が小さくなった頃から、しきりに自分達の子どもが欲しいといっているせいか、ここ最近、修兵を見る眼差しが何だか母親と父親のようになってきている。
ついでにその姿形は、他のヤツらに比べて怖いと感じる点が少なかったらしい。
「修ちゃん、白だよ、解る?」と言って、手を差しだした白に修兵が怖ず怖ずと手を伸ばす。
抱っこはまだ怖いが握手なら、と言ったところなのだろう。
それでも白は上機嫌で修兵の手を握ると、「にゃんにゃんの修ちゃんも、よろしくねー!」と言って満足げに笑った。
「にゃぅ……ぅ?」
元々、仮面の軍勢組に悪感情など持っていない修兵だから、この接触を機に皆に興味を持ったらしい
。白の横にいた鉢玄を手始めに、次々と皆の手を握っていく。
小さな修兵を殊の外可愛がっているローズが、やや暴走しそうだったのを羅武が止めながらも無事に全員と握手を交わした修兵は、最後に「みゃー」と嬉しそうに鳴き笑いながらオレに抱き付いた。
そりゃ、オレとは握手じゃねぇもんな。
ところが、妙なことに修兵はオレの手を掴もうとする。
なんだ、オレとも握手がしたいのか?
だが、そうでもないようだ。
「修兵……?どうした?」
「んーん、んーん」
「あぁ?」
とりあえず好きにさせてみたら、修兵は何故かオレの右手の人さし指を噛み始めた。
ただ、本気で噛んでいるわけではない。甘噛みしながら時折オレの指を吸ってくる。
一体、何をしたいんだろう。
可愛い仕草だから、ずっとそうしてくれているのは構わないのだが、何か意図があるのなら解ってやりたい。
すると、そんな修兵の様子に鉢玄が動いた。
「ふむふむ。白サンが言っていた通りですね」と言いながら、自分自身で持ってきた土産から何かをもってこちらへやって来る。
「白サン、これでいいんでしたヨネ」
「うん!ありがとー、ハッちん!!」
「どういたしマシテ。えぇーと……はい、六車サン。多分、修兵サンはこれが欲しいんですよ」
「これ……って、何だ?粉ミルク?」
「えぇ。仔猫にはミルクだと、白サンが。こっちが哺乳瓶デス」
「ふぅーん……」
「ふぅーんじゃないよ!莫迦拳西!!早く作ってきてあげなよね!!修ちゃんお腹ぺこぺこなんだから!」
「なっ、お、オレが作るのか!?」
「とーぜんでしょ!!!修ちゃんは莫迦拳西のなんだから!!ほら、早く!!」
「だー!わかったからギャイギャイ喚くな!修兵、あー……ちょっと待っててくれ。すぐに美味しいもの持ってくるからな………オマエら、無理に修兵を抱いたりするなよ!いいな!」
「へいへい。わーったわーった。えぇから、はよ準備してきたったり」
「……ったく」
何だか上手くのせられた気がしないでもないが、鉢玄の言うことが正しければ、修兵は空腹だということになる。
潜在霊圧の高い仔猫だから、エネルギーが切れると事だ。
粉ミルクが入った缶と哺乳瓶を持って台所へ向かったオレは、缶の側面に書かれていた「美味しいミルクの作り方」とやらに目を通してから、薬缶を火にかけた。
どうやら分量と温度さえきちんとすれば、小難しい作業は特にないようで、手早く必要な作業を済ませて哺乳瓶一杯のミルクを作る。
そうして居間に戻ってみると、もうそこはお祭り状態だった。
言いつけ通り、無理に抱き上げたりはしていないようだが、皆、羽織からちょこんと出ている手や尻尾、頭の上でぴこぴこと動く耳を思い思いに撫でて楽しんでいる。
修兵も撫でてもらうのは好きらしい。
時折目を瞑って「にゃぁ」と鳴いている。
だが、ふれ合いタイムもそこまで。
オレが戻ってきたことに気付いた修兵が、嬉しそうに笑って「みゃん!」と鳴く。
「イイ子にしてたか?」と声を掛けて隣に座ると、白羽織にくるまれた身体で、ヨチヨチとオレの膝の上にのってきた。
定位置は、やはりオレの膝というわけだ。
「んみゃーぁ?……んーんー?」
「ん?これか?よしよし、今やるからな……」
「あ、ちょっと六車サン、一応、自分で温度確かめた方が良いデスヨ。多分平気だと思いマスガ、万が一って事もありますカラ」
「温度?あぁ、こいつのか……」
確かにまぁ、手順と温度は守ったつもりだが、数値上の温度と舌で感じる温度は別物かもしれない。
特にまだ感覚器官が鋭敏な仔猫のこと、熱いミルクで泣かせてしまうのは可哀想だ。
しからば、と吸い口を前歯で噛み、中の液体を少しだけ口の中に。
……うん、これなら平気だろう。オレの様子を見ていた修兵の口元に吸い口をあてがってやる。
すると、オレのデモンストレーションで何となく飲み方が解っていたらしく、可愛い唇ではむ、と吸い口を挟んだ修兵は、そのまま順調に中のミルクを飲み始めた。
味がお気に召したのか、しばらくすると小さな手も哺乳瓶に添えられる。
「わぁ、可愛いねぇ……一生懸命だよ」
「やっぱし、仔猫にミルクってのはセオリーな」
「でしょー?えっへん!白、えらーい!!」
可愛い仔猫の食事シーンには、皆、揃って大興奮だ。
真子が担当と決まっていたのか、えらく高性能に見えるカメラで、いつのまにやら修兵の動画まで撮影しはじめている。
きっと後でオレにもテープをダビングすることが、暗黙の交換条件となっているのだろう。
とりあえず今は修兵の食事が最優先か。
「よ、っと……」
仔猫がミルクを飲むペースに合わせて、徐々に哺乳瓶を傾けてやりながら、修兵自身も支えてやる。
5分ほどかけてゆっくりとミルクを飲み干した修兵は、ごちそうさまと言う代わりに満足そうに喉を鳴らしてくれた。
これで無事に食事が終了、と思ったが、まだ仕事が一つあるらしい。
「六車サン、げっぷさせてあげてくださいね」と、鉢玄がすかさずオレにアドバイスをくれる。本当に父親並みに詳しいな。感心しながらそう言うと、
「そりゃ、白サンとの子どものためですカラ」
「やだもぉー!!ハッちんたらぁー!!」と、いきなりのろけシーンの上映開始。
その収拾はひよ里のツッコミに任せておくとして、言われた通りに修兵を縦抱きにして背中をさする。
少しの間そうしていると、肩口で「けふ、っ」と音がした。無事にげっぷも出せたようだ。
よしよし、と膝の上にまた座らせてやると、仔猫は嬉しそうに「みにゃー」と鳴いた。その様子に、ローズが目を細めて言う。
「よかったねぇ、お腹一杯になったんだ、修兵。それじゃ次は、ボクと羅武の番だね。拳西、今の修兵に合わせて、尻尾がちゃんと出るようにちょっと改造してもらった服を持ってきたから……えーっと、一応、着物と現世風の洋服を2パターンずつね。あ、明日にもまた届けさせるから」
「あ、あぁ……いつも悪いな、ローズ、羅武」
「気にすんな。ローズのヤツ、ともかく修兵が可愛くて仕方ねぇんだ。自分が選んだ服を修兵が着てるってだけで、その日は一日中テンションがハイだぜ」
「へぇ……まるで浮竹と同じだな」
「同じって言うか……ライバルらしいぜ、ローズに言わせると。まぁ、どう取り合ってみたところで、修兵がお前のだって事は変わらねぇのにな」
「それはそれなんだよ、羅武!!ほら!良いから、こっちに持ってきてよ!」
「へーへー。相変わらず、旦那使いの荒い嫁さんだぜ……っと、怒るなよ、ローズ。愛してっから」
「………そんなの知ってるよ」
「ん。なら良し。じゃあ、ちょっと待ってろ修兵、今持ってきてやるから」
そう言うと、部屋の隅で山積みとなっている土産物の中から、羅武は真っ赤なリボンのかかった行李箱を抱えて持ってきた。
「なぁぅ?」と不思議そうな表情を浮かべる修兵の前で、ローズがいそいそとそれを開封する。
すると中から出て来たのは、ローズ自身が言った通り、数種類の着物と服。
「修兵、どれが良いかなー?」
「んなー?」
「これとこれも良いし、あぁ、やっぱりこっちも捨てがたいよねぇ……うーん、やっぱりさっきの店で見たオールインワン、買っておけば良かったなぁ。ねぇ羅武、帰りがけにさぁ……」
「さっきの店にもう一回寄っていこうってんだろ?そいつはかまわねぇが、早いところ今着る服を決めてやれよ。あ、でも、もしかすると、これからしばらくしたら修兵は風呂か、拳西?」
「あぁ、嫌がらないようなら、ちゃんと入れてやろうと思ってる」
「だったら、今着る服は良いから、風呂に入った後に着る服を選んでやれよ、ローズ」
「入浴後かぁ……それなら、寝間着に出来るものが良いよねぇ。えーと……じゃあ、この着物はどうかな?膝丈だし寝るにも窮屈じゃないよ。どう、修兵?これ……好き?」
「むみゃぁ?……にゅー……にゃん!!」
「お、気に入ったみてぇだぜ?よかったな、ローズ」
「うん、一安心だよ、羅武。拳西、あとでちゃんと着せてあげてよね」
「あぁ。有り難くそうさせてもらう。ところで……」
「わかってるて、拳西。オレらはもう帰るから安心しぃ。ちんまい仔猫と本格的に遊ぶんは、明日以降のお楽しみにとって置くわ。せやから、今日は早いところ休ませる準備したったり」
そう言って、よっこらせと真子が腰を上げる。
続いて皆もそれぞれ席を立ち、玄関へと向かいだした。
真子達も、ちゃんと修兵のことを考えてくれていたらしい。
仔猫を慈しむ守護者達に見送りぐらいはするかと、修兵を抱いてオレ自身も立ち上がる。
そうする間にも、銘々持ってきた土産物の内容がオレに伝えられ、最後は明日の午後、9番隊隊舎へ全員再集合というスケジュールの確認で締め括り。
順番に修兵の頭を撫で、またなと告げて家を去っていく真子達を見送ったオレ達は、最後のリサにまたなと告げてから部屋へと戻った。
さて、これからまた修兵と二人きりだ。
時間も時間だし、さすがにもう来客はないだろう。
定位置のソファに再び座り、修兵も膝の上に降ろしてやったのだが、その動きが少し鈍いようだ。大きな紫黒瞳も、なんだかとろんとしている。
「……修兵、大丈夫か?」
身体の具合が悪くなったかと、慌てて額に手を当ててみたが熱はない。
どこか痛がる様子もない。むしろ、リラックスした様子で、ふにゅふにゅと体勢を崩し始めた。
そのままわしゃわしゃと白羽織をかき寄せ、ゆっくりと身体を丸め始める。
どうやら、満腹になったことで、仔猫は眠くなったらしい。
これは風呂の前に仮眠が先だな。
このついでに渡された観察日記とやらも書いてしまうとするか。
「となると……ちょっとごめんな、修兵」
「?………うみゃぅ?」
「よしよし。ちょっと移動するだけだ。ちょっとな……」
「にゅー……ぁ」
眠たげな声をあげる仔猫を抱き上げ、隣室へ向かう。
和室の文机の前に腰を下ろし、あぐらをかいた膝の上に修兵を降ろしてやると、改めて巣作りをした仔猫は身体を丸めてすやすやと眠り始めた。
よしよし、と頭を撫でてやると、気持ちよさそうに喉を鳴らす。この分では、しばらく目を覚ましそうにない。
―――否、ここまで書いたところで、そろそろ仔猫が起きそうな素振りを見せ始めた。
というわけで、今日はここまでだ。
これから風呂に入れて、ちゃんとベッドで眠ることにする。
その模様は、また明日にでも書くとしよう。
→ 観察日記 一日目:追記へ続く